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「課長、許してあげて下さい。私は彩さんに私の分も幸せになって欲しい。私はもう一番好きな人とは結婚できないから、彩さんには好きな人と一緒になって欲しいんです」
「島本くん、なんでそんな悲しい事を言うんだ?」
「だって、私の一番好きな人は課長だから」
「島本くん……」
「あの夜の告白、冗談じゃないんですよ。実は課長に三年片思いしていました。今も課長が大好きです」
傷つく事が怖くて言えなかったけど、自分の気持ちから、もう逃げたくない。
切れ長の目をじっと見つめると、気まずそうに視線を逸らされる。
「困る。迷惑だ」
ハッキリとした拒絶にズキッと胸が痛くなる。
「死んだ人間の事は忘れなさい」
息の音を止めるように課長の言葉が突き刺さる。
課長にそう言われるのはわかっていた。
だけど、ちゃんと伝えたかった。
視界がぐにゃっと歪む。
泣いちゃダメだ。そう思うのに、目の際に涙が浮かぶ。
「忘れられません! 幽霊になっても課長が好きです!」
切れ長の瞳が大きく見開いた。
黙ったまま私の顔を見つめ、課長は落胆するようなため息をついた。
「島本くん、もう君とは一緒にいられない」
課長が背を向けて歩き出した。
「待って下さい。話は終わってませんよ!」
課長を追いかけ、公園の外に出ると、課長の姿はなかった。
「課長! 濱田課長!」
課長はどこにもいなかった。
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