6 すれ違い

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「課長、許してあげて下さい。私は彩さんに私の分も幸せになって欲しい。私はもう一番好きな人とは結婚できないから、彩さんには好きな人と一緒になって欲しいんです」 「島本くん、なんでそんな悲しい事を言うんだ?」 「だって、私の一番好きな人は課長だから」 「島本くん……」 「あの夜の告白、冗談じゃないんですよ。実は課長に三年片思いしていました。今も課長が大好きです」  傷つく事が怖くて言えなかったけど、自分の気持ちから、もう逃げたくない。  切れ長の目をじっと見つめると、気まずそうに視線を逸らされる。  「困る。迷惑だ」  ハッキリとした拒絶にズキッと胸が痛くなる。 「死んだ人間の事は忘れなさい」  息の音を止めるように課長の言葉が突き刺さる。  課長にそう言われるのはわかっていた。  だけど、ちゃんと伝えたかった。  視界がぐにゃっと歪む。   泣いちゃダメだ。そう思うのに、目の際に涙が浮かぶ。 「忘れられません! 幽霊になっても課長が好きです!」  切れ長の瞳が大きく見開いた。  黙ったまま私の顔を見つめ、課長は落胆するようなため息をついた。 「島本くん、もう君とは一緒にいられない」  課長が背を向けて歩き出した。 「待って下さい。話は終わってませんよ!」  課長を追いかけ、公園の外に出ると、課長の姿はなかった。 「課長! 濱田課長!」  課長はどこにもいなかった。
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