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「この手紙でフォローしたつもりですか! 課長にフラれてどれだけ傷ついたと思ってるんですか! 私、三年も課長に片思いしてたんですよ!」
「ごめん」
「私の事が嫌いならはっきり言って下さい。中途半端に魅力があるとか書かないで下さい」
すまなさそうに見つめる課長に感情がどんどん溢れてくる。
「どうしていきなり死んじゃうんですか! どうして私の前に出てくるんですか! どうして私だけが課長を見れるんですか! なんで私の名前の薔薇なんて植えるんですか!……期待しちゃうじゃないですか……」
「島本くん……」
大きな手がそっと私の肩に触れる。触れた場所から課長の温かさを感じる。
課長はもうこの世の人じゃないとわかっているけど、生きているみたい。
「課長、私の事、嫌いでもいいから、傍にいて。いきなりいなくなるのはもう嫌です」
「嫌いじゃないよ」
「それって少しは想ってくれてるって事ですか?」
課長にギュッと抱きしめられる。
鼻先が課長の胸に当たって、課長の匂いがする。匂いだけじゃない、体温も、私の背中に回る強い腕の感触も感じる。
「少しじゃない。僕が今ここにいるのは君に会いたかったからだ。僕の一番の未練は娘じゃない。島本くんだ」
え……。私?
驚いて見上げると熱い視線とぶつかる。
「娘さんの結婚が許せないって言ってたじゃないですか? あれは何だったんですか?」
「娘の事も確かに心配ではあったが、一番は島本くんの傍にいたかったんだ」
「酷い。人の事振り回して」
「本当にごめん」
「悪いと思ってるなら課長の気持ちをちゃんと聞かせて下さい」
真っすぐに課長を見た。
課長はとても優しい目で見つめ返した。
「一緒にひこうき雲を見た日。あの時から僕は島本くんに恋をしてた」
胸がいっぱいになった。
「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか! 私たち一年前から両想いだったんじゃないですか」
「手紙に書いた通り、僕は相応しい相手じゃないからだ。君より二十も年上で、腰痛持ちのおっさんだから」
「そんなの知ってます。全部ひっくるめて課長が好きなんです」
「ありがとう。島本くん」
そう課長が口にした途端、課長の姿が透け出した。
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