7 バイバイ、課長

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「課長、体が……」 「そろそろあの世に行く時間みたいだ」 「また私の前に現れてくれますよね?」 「残念だけど、あの世に行ったらもう会えないんだ」 「会えないって、二度と会えないって事ですか」 「うん」 「そんなの嫌です! やっと課長の気持ちが聞けたのに」 「僕の事なんてすぐに忘れるよ」 「忘れません。だって、だってこんなに好きなのに……」 「空を見てごらん」 「今それどころじゃないです」 「いいから、空を見て」    見上げると、雲一つない茜色の空に、くっきりとした白い一本のひこうき雲があった。 「僕はひこうき雲になって君を見てるから、勇気が欲しい時、空を見てごらん。必ずひこうき雲があるから」 「課長、嫌だ……。行っちゃいやだ」 「あの夜も、それから幽霊になってからも好きだと言ってくれてありがとう。嬉しかったよ」  頬に課長の手が触れた。その手を握りしめると課長が微笑んだ。それからゆっくりと唇が重なる。  重なった唇は流した涙の味がする。 「バイバイ、島本くん」      目を開けると課長はどこにもいなかった。      涙が溢れた。    うずくまって、道路に手をついて、ザラリとしたアスファルトに額をつけ、声を上げて泣いた。  胸が張り裂けそうな程痛かった。痛くて、痛くて死んでしまいそうだった。  
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