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唇を離すと課長の戸惑うような視線と合う。これ以上はダメって思うけど、走り出した気持ちは止まらない。課長の背中に腕を回して強く抱きついた。
「好きなんです」
「島本くん……」
「課長が好きです」
見上げると課長は眉間に縦ジワを作り、困惑した表情を浮かべている。
「ごめん」
絞り出すような声で、課長は本当にすまなさそうに言った。
居たたまれなくなった。涙が零れそうになるのを誤魔化すように笑った。
「なんてね、酔っ払いの冗談ですよ」
精一杯の笑顔を浮かべる。課長と気まずくなりたくないから。
「じゃあ、課長、お疲れ様でした」
信号が青になり、その場から走り出した。
走りながら涙が溢れる。
やんなんちゃう。玉砕だ。
課長に片思いをした三年分の気持ちが強く胸を締め付けた。
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