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3 最悪な月曜日
失恋なんて初めてじゃないのに土日はずっと泣き通した。もうミイラになっちゃうぐらい泣いた。
部屋中、丸めたティッシュでいっぱいになった。 泣いても泣いても気は晴れないし、胸の痛みは取れない。涙を止める元栓が壊れてしまったみたいだ。
社会人になってから初めての恋だった。三年間課長だけを見て過ごして来た。課長に褒められるのが嬉しくて仕事も頑張って来た。しっかり者の島本くんって、課長に言われるのが嬉しかった。
月曜日は何とか気持ちを切り替えて出社した。
課長に会ったら笑顔で「おはようございます」って言おうと決めていた。
せめて仕事では誰よりも信頼される部下でいたい。課長に頼りにされるしっかり者の島本くんでいよう。そう思いながら課長が来るのを待った。
だけど課長がいつも出社してくる午前八時半になっても姿は見えない。始業時間の午前九時になっても。
電話一つよこさない課長に違和感を覚えた。そして午後、課長の娘さんから連絡があり、私が電話を取った。
「今朝、交通事故で父は亡くなりました」
受話器越しに娘さんの涙混じりの声がした。
「え」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「父が死んだんです」
「課長が死んだ……」
嘘……。嘘だ。
「嘘ですよね?」
「嘘じゃないです」
「嘘ですよね?」
「……嘘じゃないです」
信じられなかった。何度聞いても娘さんは泣きながら同じ答えを繰り返した。
気づいたら私が受けた電話を係長が替わっていて、江里菜に島本さん、落ち着いて下さいと宥められていた。
自分が今、どこにいて、何をしているのかわからない。それ程、混乱した。
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