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「やあ、島本くん。夜分遅くにすまない」
課長が気まずそうな笑みを浮かべる。
とうとう精神がやられてしまったんだろうか。
「本当に濱田課長ですか?」
「ああ、そうだ」
「本物ですか?」
「当たり前じゃないか」
課長が苦笑を浮かべた。
「本当に?」
「うん」
課長が頷いた。
目の前にいるのは、どこからどう見ても私の知ってる課長だった。切れ長の目が収まった端正な顔つきも、低めの声も、私より十センチ身長が高い所も生前と何一つ変わらない。
「本当に課長?」
確かめるように課長の頬に触れる。柔らかな肌の感触があって、温もりがあった。
熱い気持ちがこみ上げて来て涙が溢れる。
「課長……」
課長に抱きついて泣いた。
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