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北欧を想わせる彫りの深い顔立ちに、きつく縁取られた目許。長い脚を邪魔そうに組んで、彫刻のようなその姿に魅入りながら、奈緒は溜め息を零した。「紳士淑女からは、今日は奈緒は来ていないのかと散々訊かれてウンザリしたよ…唯でさえ君が傍に居なかったから、私だって寂しかったのに……君は? 私が居なくて寂しくなかった?」
問われて奈緒はふわりと笑んだ。
「私も寂しかったですよ?」
奈緒の言葉に大樹が双眸を見開く。大樹は奈緒に手を差し伸べようとし…だが。
「社長が怠けて貯めた仕事の書類の仕分けと、スケジュールの確認及び、医療関係者への配布する資料の最終チェックで、とっても忙しかったのでひとり寂しく黄昏ました」
「…………………」
「では車を表に回しますので、支度なさって下さい」
立ち上がった奈緒を大樹は見上げ、腹をさすってボソリと呟いた。
「ああ…お腹が空いたな~ひとりで食事をするのは寂しい…奈緒も私の自宅で食事でもどうだい? 好いワインが在るんだが」
ドアノブに手を掛け振り向いた奈緒が、
「私を呼ぶ時は『奈緒』ではなく『高平』とお呼び下さい」
「…奈緒、待ってワインが駄目ならせめてモーニングコーヒーを二人で」
大樹は慌てて立ち上がり奈緒を追い掛けるが、虚しく眼前でドアが閉まる。「奈緒…こんなに君を愛しているのに、想いは届かないのだろうか? 君をベッドに押し倒して、泣いても朝まで放さないのに愛し…」
「社長」
いきなりドアが開いて、大樹はドキッと飛び上がり掛け…奈緒がそれを見るなり眼を細めて一言。
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