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エピローグ
抜けるような青だ。
菅野敬太は空を見上げた。雲一つない十一月の澄み切った青空は、見上げているとこのまま吸い込まれそうだ。
菅野は視線を目の前の競技場に戻す。
試合開始まで、あと三〇分足らず。そこでショルダーやメットをつけて試合開始前のウォーミングアップをしているのは、母校の後輩たちだった。
菅野が彼らのコーチを務め、共に戦ったのは二年前になる。
あの頃は一年生や二年生で、まだ戦力としては不十分だった部員たちが、今やチームを引っ張っていく立場になっていた。
菅野は目をこらして後輩たちを一人一人確認していった。菅野の視線がはたと止まる。背番号二三。笹原高志。
主将としての貫禄を身につけた彼も、あの頃はまだ駆け出しのランニングバックだった。
闘争心やハングリー精神に少し欠けたような穏やかで深い高志の目。その目がまるで別人のように菅野を見つめ返したきた日のことがよみがえる。
あれは、彩華学院大学アメリカンフットボール部の飲み会の席だった。
一二月から続く長いオフシーズンが終わる二月下旬に開かれる宴会。
いつもならそれは、三月から新体制となるBLUE ROSEが新しい主将や副将のもとで新たなスタートを切る前にチームの絆を深める会であるはずだが、今年は少し違い、菅野の送別会でもあった。
菅野も臨時コーチを終え、三月から自分が所属する社会人チームに復帰することになっていたのだ。
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