盗み。

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盗み。

 私は、佐藤香澄(さとうかすみ)18歳。  職業・盗み見。  人からお金や金属品を盗むためならどんな手も使った。詐欺、スリ、泥棒。  生きるためならなんだってやる。  私は、小さい頃……親に見捨てられた。  育児放置というやつだ。空腹のためスーパーのモノを初めて盗んで食べた。それからだ。  どうしたら人に気づかれずに商品を盗める?  それだけを考えて生きてきた。  施設に行くことになっても小学校に行けるようになってもやめなかった。いや。  学校の時は、給食をどうしたらたくさん食べられるか知恵を振り絞って考えたっけ……。  18になれば、それ以上の知識も増えた。  今回のターゲットは、二世帯で住んでいる老夫婦に狙いを定めた。  小さな孫を可愛がるお婆さんは70代で、思ったより若々しく背筋もまっすぐで品がある。  いかにも奥様みたいな人だった。元看護師らしい。  なので、昔世話になった患者という設定で近づいた。もちろん一度も面識もない。  それを逆手にとり、いかにも知っているかのように笑顔で振る舞った。  最初は、困惑していたが1人の知り合いとして、私を受け入れてくれるようになった。今だと……。 「あら香澄ちゃん。おはよーう」 「おはようございます。まだまだ暑いですね」 「そうね。早く秋になってほしいわよね。香澄ちゃんは、今から仕事?」 「はい。行ってきます」  家が近くアパートに住む気さくな社会人。  昔から身体が弱く病院に通院した時に彼女と出会った。……それが設定。  あの家の行動パターンは、把握している。  娘夫婦は、共働き。孫も幼稚園で居ないし、そのお婆さんの旦那さんは、すでに他界。  お婆さんのみ。その人も趣味を通して出掛けることもあるし、帰ってきた孫の世話で家に居るのかどちらかだ。  今日は、確か趣味のために出かける日。  私は、仕事に行くふりをしながら様子をうかがった。  影で見ているとやはり庭の花の水やりを終わると鍵を閉めて車で出掛けて行った。しばらく帰って来ない。  私は人目を気にしながらこっそりと合鍵で、中に潜入した。何故合鍵を持っているのかは、以前盗んで似た鍵と交換しておいた。  これで怪しまれることなく家の中を物色出来る。  中に潜入するとさすが二世帯の一軒家に住んでいるだけはある。お婆さんも元看護師だから稼ぎもなかなかいい。
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