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そろそろ、この輪っか、取らなくちゃ。
この中に入る前に取ってしまおう。
だけど、その前に――。
七都は深呼吸をし、くるりと方向転換した。
門とは逆の向き――たった今歩いてきた、道のほうへ。
そして、霧に包まれた道の彼方を眺める。
もちろん、やはりそこには、ゆっくりと渦巻くように動き続ける霧しか見えなかった。
通り過ぎて行った魔神族の一行も、既に霧の中に消えている。
けれども、確かに誰かがいるのだ。その霧に紛れて。
この門から地の都に入る前に、決着をつけなければならない。あのストーカーと。
自分に敵意の混じった突き刺すような視線を送り続ける、謎の人物。
カーラジルトと別れてからも、ずっとあとをついてきている。
いったい何者なのか。何の目的があるのか。はっきり言って、もううんざりだ。
正体のわからないものにつきまとわれるなんて、ストレス以外の何物でもない。
魔の領域には、この不安を取り除いて、穏やかな気持ちで入らなければ。
もやもやと引きずったまま中に入るなんて、真っ平だ。
魔の領域自体不安なところなのに、余計な不安を抱え込んだまま門を通ってはいけない。
七都は、首にかけていた猫の目ナビを手のひらに乗せた。
「霧の中にいる魔神族をスキャンして」
命令すると、ナビの半球の中に影が現れる。
オレンジ色の人の形をした影だった。
やっぱり、魔神族……。
七都は、その影を見つめた。ナビを持つ手が震えている。
アルティノエの町を出てから、七都をずっとつけてきたストーカー。やはり存在したのだ。
わかってはいたとはいえ、その存在の証拠となる画像をこうしてまざまざと見せつけられると、押さえつけていた不安がとめどもなく膨れ上がっていく。
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