第4話 青衣の魔貴族

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「どうしてる、ですって?」  七都は、一歩後ろに下がる。  話しにくいなあ。なんか興奮してボッワボワになった猫に怒られてるみたい……。 「あの方がああいう状態になってしまわれたのはご自分のせいだと、あなたは自覚しておられないのか!?」  キディアスは、叫ぶように言った。  ああいう状態……。  腕のことか……。  そうか。それでこの人、私を……。 「あれほど美しかったあの方が、あんなおいたわしいお姿に……」  キディアスは、うつむいた。 「ナイジェル、具合悪いの?」  七都は、訊ねる。  別れたときは、元気そうだったけど……。  片腕がなくなってしまったのだもの。精神的にもショックを受けてるだろうし、かなり落ち込んでいるのかもしれない。 「もしかして、部屋に閉じこもって、臥せってる?」 「あの方は、あんなお体になっても、外に出て行こうとされる。部屋から出て行かれないよう、監視させていただいている」 「するとあなたは、ナイジェル、つまり水の魔王さまである自分の主君を幽閉してるんだ」  七都が言うとキディアスは、七都をキッと睨んだ。 「あのお姿を外にさらしていただくわけには参りませんから。ご自分では、こだわらぬとおっしゃっておられるが」 「ナイジェル、性格、おおらかだものね」  七都は、『ノーテンキ』と言うのはやめておく。そんなことを口にしようものなら、火に大量の油どころかダイナマイトだ。 「キディアス、私を恨んでるの?」 「お恨み申しあげますよ、ナナトさま」  キディアスが低い声で言った。 「あなたのせいで、あの方は腕を失われたのですから」 「やっぱり、私のせいなんだ?」 「あなたがこの世界に来られたせいです」  キディアスが、腹立たしげに呟く。 「ユードのせいじゃないの? ナイジェルの腕を奪ったのは、ユードだよ。彼がナイジェルの右腕を陽だまりに押し付けたの。それで、ナイジェルの右腕は太陽の火に焼かれて、炎に包まれて……」  七都は黙る。キディアスが、怒りではなく、恐怖に満ちた苦しげな表情をしたからだ。
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