第3話 化け猫カーラジルト

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「私が君に対してこういうことが出来るのも、これがもう最後だ。本来は君を抱きしめるなど、許されないことなのだから」 「シャルディンは平気でやりそうなのに……」 「だから私は、彼ではないからね」  カーラジルトは、七都の頭をいとおしげに撫でた。 「君の母君にも、こういうことは出来なかったよ」 「あなたは私のお母さんを知ってるんだよね。……ね。私、お母さんに会えるよね?」 「会えるよ、きっと。私も会いたい」  それからカーラジルトは、七都をやさしく引き離す。 「では、お行き、ナナト。君の目的の場所をめざして」 「うん。ありがとう、カーラジルト。きっと私は、わがままで、自分勝手で、扱いにくいお姫さまだったろうね。ごめんなさい」 「いや。魔神族の姫君の中では、ましなほうなんじゃないかな」  七都は背伸びをして、カーラジルトの頬――唇のすぐ横あたりにキスをした。  カーラジルトは、びっくりしたような表情をする。 「セレウスにもシャルディンにも、お別れにキスはあげたから、もちろんあなたにも。婚約者がいるから、唇は遠慮しとく」 「ありがとう。ナナト。我が姫君」  カーラジルトは、再び白いグリアモスに変身した。  彼は一度だけ七都を振り返り、それから風になって、走り去った。  木々の枝が揺れ、空気が渦巻く。  やがてそれもすぐに消え去り、元の夜の静けさが戻ってくる。  七都は、しばらく立ち尽くした。  またひとりになってしまった。  言いようのない寂しさを感じる。心のどこかの一部分を失ってしまったかのような。  でも、彼にもまた会えるよね。だって、同じ風の魔神族なんだもの。私の側近になる人だもの。  カーラジルトに教えてもらったことは、忘れない。体でも頭でも覚えている。  今度はぐれグリアモスに遭遇したって、前よりはずっとまともに戦えると思う。 (ナナトさま!!)  誰かが、頭の中に話しかけた。
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