第4話 青衣の魔貴族

17/21
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「あなたのような方が、そういうことを口にしてはなりませんよ。それもまた直していただかねばいけませんね」 「残念ながら、私は従順でおとなしい貴婦人にはなれそうもない。どれだけあなたが教育しても」  七都は言った。 「それにナイジェルと私は、まだそういう関係じゃないから」 「お互いに惹かれあっておられるのでしょう。ご対面されれば、そうなるのは時間の問題ですよ」 「そうかな。ナイジェルだって、いきなり私を目の前に連れて来られて、『はい、あなたの愛人ですよ』なんて言われても、困るだけだと思うけど」 「そんなことはありません。シルヴェリスさまは、あなたのことを気に入っておられるのですから。あなたを目の当たりにされると、思いがより深くなられるに違いありません。それに、あなたが初めての発情期に入っても、問題のないようにしておかねばなりませんし、きっとシルヴェリスさまも、その点では協力して下さるでしょう。とはいえご対面の前に、あなたには、お体をきれいに直していただかないといけませんね。ひどいお怪我をされているようですから。その手配もしましょう。その傷をシルヴェリスさまにお見せしてはなりません。あの方には、もっと美しいあなたをご覧にいれなければ」 「ねえ、キディアス」 「はい」 「あなたはナイジェルにとって、きっと、とても優秀な側近なんだと思う。愛人候補の教育にまで心を砕いているものね。私につきまとったのも、ナイジェルの愛人としてふさわしいかどうか見極めたかったんでしょう。頭も回るし、剣も相当使えるみたいだし、きれいだし、すばらしい人だと思うよ」  七都は、キディアスの背中に両手を回し、ぎゅっと抱きしめる。  キディアスの七都に絡めている腕が、そのはずみで少し緩んだ。 「ただね。ちょっと、というより、かなりなんだけど」  七都は、キディアスの胸から顔を上げて彼を真っ直ぐ見つめ、かわいらしく、にっと笑って見せた。 「ひとりよがりで、しつこいのが欠点だ」  キディアスの腕の中で、七都の姿が消え失せる。  彼は、たった今まで七都を抱きしめていた自分の手を静かに眺めた。  黒い手袋をはめた両手が、まだ輪を作ったまま重ねられている。 「油断したか……。なかなか、したたかな娘だ」  彼は、呟いた。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!