カワイイ俺のカワイイ進捗

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 今日は時成も昼前からのシフトだった。実際、疲れているのだろう。  体重を預けるように両腕を机上に乗せると、掌で包み込んだグラスから伸びるストローに、桃色の唇をつける。 「お前、昼飯は?」  時成はどうも夏に弱い。去年の夏も食欲が湧かないとか言って、何度も昼食を抜こうとしていた。  そのたびに「軽くでもいいから何かつまめ」と指導していたのだが……。  時成は俺の質問の意図に気付いたのか、ごくりとオレンジジュースを飲み込むと、微苦笑を浮かべて、 「ちゃーんとオムライスをオーダーしてきましたよー。ちょうどお客様の注文と被っちゃったんで、順番待ちですー」  再びストローに口をつけ一気に三分の一程を吸い込んだ時成は、やっと一息ついたのか、ふうと小さく息を吐き出した。  そのまま上目遣い気味に、視線だけを俺に投げる。 「そーいえばユウちゃん先輩、今日この近くでイベントやってるの知ってますー?」  知っているもなにも、ここ秋葉原というのは元々が屈指の観光地、及びサブカルの聖地とも言うべき街だ。  集客のある夏休みとなれば、連日どこかしらで"イベント"が行われている。  把握している"イベント"をずらっと脳裏に浮かべた俺は、その中から一つを採用し、「ああ」と首肯した。 「近くに出来たメイド喫茶……確か『百華邸』(ひゃっかてい)って名前だっけか。そこがやってるやつだろ? ランキング上位者のミニ写真集を発売するとかで、当人達の手渡し即売イベント」 「さっすがユウちゃん先輩ー。それですそれですー」  夏が本格的なる少し前、通りを二つ挟んだ先に、新しいメイド喫茶がオープンした。  数年前の"メイド喫茶全盛期"時に開店した店舗が次々と姿を消すなか、新たに参戦してくるとは。一体どれほど趣向を凝らしているのかと色々な意味で興味を惹かれた俺は、可能な範囲でチェック済みである。
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