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始まり
今日、姑の四十九日法要が、無事に終わった……。
法要の帰り道、路上で人形を売る商人を見かけた。正直、こういうお店とはあまり関わりたくない。そう密かに思っていたリツコは、離れて歩いた。それなのに……。
「ママ、わたし、あのお人形が欲しい!」
娘のルカが、珍しく「欲しい」と言うので、リツコの心は揺れた。
「どうして、あのお人形が欲しいの?」
リツコは屈んで、娘と目を合わせ、聞いてみる。陶器で出来た人形はルカの顔よりも大きく、一人遊びの玩具には、相応しくないと感じたからだ。
「あのお人形『お婆ちゃん』に、似てるから……」
そう言うと、ルカは下を向いてしまう。ルカは、祖母が好きだった。言われてみると、人形の顔は姑に似ていた。特に、線のように細い垂れ目が、よく似ている。
まだ、四十九日の法要を終えたばかり。きっとまだ、祖母が恋しいのだろう。リツコはそう考え、娘のために人形を買うことにした。
一つだけ気になったのは「この人形は、死者に手紙を送れるよ」と言う、商人の言葉だった。
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