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「実は…ね」
と、Aさんは引き続き、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら話します。
「卒業アルバムの…ロウ人形みたいなあの子の顔を見た時は、
『たぶん、チャコちゃんはもうこの世には、いないだろうな』とは、思ったんだけど…
それでも、遺体が見付かるまでは『もしかしら、どこかで生きているかもしれない』とも、願ってたんだ…。
だから私も最初、あの子の遺体が見付かったってニュースを見た時は…
物凄く、悲しかったわ…。
それから、しばらくの間、何も手に付かずに過ごしていたのね。
でもね。
ある時…あの子のお父さんが、私にこう言ってくれたのよ。
『Aちゃん…。
この世に残った僕たちが、いつまでもくよくよなんてしてたら、天国に行ったアイツだって、きっと喜びはしないよ。
もちろん、僕だってあの子を失って、悲しくて悲しくて仕方がないよ。
でもね。
この世に残された家族や友だちが、元気にしっかりと生きて行く事だって!そして、その姿を天国にいるあの子に見せてやる事だって、立派なあの子への供養になるんだぞ!
Aちゃん…だから、僕からのお願いだ。
これから、Aちゃんがアイツの分まで元気にしっかりと前を向いて生きて行く姿を天国にいるあの子に見せてやってはくれないか。
それが、今は亡きあの子に贈るメッセージになるんだから』とね…」
「………」
「私は、お父さんのその言葉を聞いて、
『確かに、その通りだ!』って、思ったの。
だから、これからは私も気持ちを切り替えて生きて行くわ!」
と…そこでAさんは、
涙をごしごしとぬぐうと…
顔を上げて、遠くを見詰めたのでした…。
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