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「さるぼぼ?この人形はそういう名前なの?」
小さな人形を手の上で転がしながら眺める。顔は無いけれど何だか可愛く見えてくるのはどうしてかしら?
「そう、飛騨地方で作られている人形だよ。確か猿の赤ん坊だったかな?色にも意味があるけれど、僕は教えてあげない。透子が自分で調べればいいよ。」
へえ、飛騨って言うと岐阜県だったかしら?猿の赤ちゃんと言われれば確かにそう見える。
「別にいいじゃない、どうして教えてくれないの?可愛いなあ、これアタシが貰ってもいい?」
見れば見るほど可愛く感じてくる。小さなベッドを手作りして眠らせてあげたいな。
「いいんじゃない?祥子も透子宛に送ってるんじゃないかな?僕に渡されても困るし。」
何だか意味深な言い方をするわね。こんな風に遠回しな言い方をするときは絶対に何かある時なんだと経験上分かっている。
「瑞樹、何か隠しているでしょ?」
「隠してはいないよ、言っていないだけで。……そんな事より僕はそろそろ夕飯を作りたいんだけど?同棲初日から僕だけにやらせるつもり?」
むう、それを普通は隠してるって言わないんですかね?言っても口では勝てないから言わないけれど。
言いたい事だけ言ってさっさとキッチンへと行ってしまった瑞樹を追いかける。さっきの事も気になるけれど、このまま夕飯を瑞樹だけに作らせるわけにはいかない。
「ちょっと待ってよ、アタシも手伝うから!」
瑞樹と並んで料理をしていると、動くたびポケットに入れたさるぼぼの人形に付いている鈴がチャリンチャリンと小さな可愛い音を鳴らしていた。
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