1637人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
「じょ、冗談よね?瑞樹。」
笑って誤魔化さないと何かが壊れてしまいそうで歪な笑みを浮べる。
「僕は冗談のつもりはないけど。どうするの?透子次第だよ。」
本気の瑞樹を感じて唾をごくりと飲み込む。確かにキスにもその先にも興味が無いわけじゃない。
でも目の前にいるのは昔から一緒にいる大切な幼馴染だ。
このキスで二人の関係が壊れてしまいそうでアタシは怖くなった。
「あ、アタシは怖い…。そんなことして瑞樹がアタシから離れて行ったら耐えられない。」
瑞樹はアタシが座っている位置まで下りてきて目線を合わせて囁く。
「僕は透子から離れないよ。おいで、気持ちいいキスを教えてあげる。」
まるで悪魔の囁きの様だった。瑞樹の声が耳の中で何度も響いてもう抗える気はしなかった。
手を伸ばした瑞樹の手を取ってフラフラと立ち上がる。
「良い子だね、透子。」
そう言って腰に腕を回され抱きしめられる。いつも小柄だと思っていた瑞樹の身体はアタシのよりずっと硬くてしっかりと筋肉が付いていた。正真正銘男の身体だった。
今まで見せられたこと無い瑞樹の一面に心臓が早鐘のようになる。
「瑞樹……」
出てきたのはいつもの強気のアタシの声ではなく間違いなく女の声だった。
最初のコメントを投稿しよう!