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瑞樹はアタシが投げたティッシュの箱をあっさりとキャッチして微笑む。
何かイヤな予感しかしない瑞樹の笑みに背筋にゾゾゾっと冷たいものが走った。
「勘違いしないでね、透子。このキスには恋愛感情なんて欠片も入っていないから。コレはあくまで練習。透子は外でしっかり王子様を探しておいで?」
そう言ってティッシュの箱をテーブルに置くと瑞樹は自分の鞄を持った。
「今日は遅くなったしもう帰るよ。透子、今日のキスちゃんと復習するんだよ?」
「なっ!?なんでっ。」
「さあね。」
そのまま玄関のドアはバタンと閉まり瑞樹は行ってしまった。
耳には瑞樹の男に人にしては少し高くて甘い声が残ってる。
アタシのファーストキスを奪った幼馴染は何を考えているのかさっぱり分からない。
今まで一度も男として見ていなかった瑞樹が急に男としての存在感を放つ。
でも瑞樹はアタシに好きになるなって言ったのよね、きっと。
じゃあ瑞樹にとってこのキスは何の意味があったのだろうか?
瑞樹に気持ちの無いキスなんてして欲しくなかった。唇を許してしまったのは自分の合意の上だったとしても……
キスの最中はフワフワと浮いているようだった気持ちが、風船がしぼむように萎んで何故だか無償に泣きたくなった。
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