1632人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
王子様を探せ?
瑞樹の言葉通りに動くのは納得がいかないが、王子様と出会いたい気持ちに変わりはない。
いつもより丁寧に化粧をして、いつもより早い時間にアパートを出る。
時間をずらすことによっていつもは見ない人と出会える確率も上がるだろう。
そんな安易な考えしか浮かばなかった。大学の成績は悪い方ではなかったのに……
出会いだなんて気合を入れて出てきてみたはいいものの、そんなモノ初日から落ちているはずも無くておじさんたちの間で電車に揺られながら会社へと向かう。
たまに見かける素敵な人は左手に他人のモノの印が付けてある。
結婚かあ、勢いで瑞樹に結婚するなんて言ったものの結婚って良いものなのかなあ?
電車を降りて勤めている社内に入ると、瑞樹が受付嬢と話してた。
受付嬢と一緒にこっちを向いた瑞樹がアタシを見て鼻で笑った。多分アタシが早く来た理由がバレたんだ。
ニヤリと笑ってアタシに近づくと
「言いつけ守れて偉いね、透子。その調子で頑張りなよ。」
小さな子供にでも言い聞かせるようにその言葉だけを残して、瑞樹は自分の持ち場に戻っていった。
受付嬢にはあんなににこやかな笑顔を見せていたのに、幼馴染への挨拶がこれってどうなの!?
もう~、絶対王子様を見つけ出して瑞樹をぎゃふんと言わせてやる!
こちらを振り返らず歩いて行った後ろ姿に心の中でアカンベーをしておいた。
最初のコメントを投稿しよう!