2|斯人

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***  そのまま、詩音は斯人を連れて町をそぞろ歩いた。公園、神社、小学校……と見てまわっていると、だんだん斯人の歩くペースが落ちてきた。 「もしかして、疲れちゃった? そっか、ずっと室内にいたから、あまり体力ないのかな」 「疲れた……んですかね、ちょっとよくわかりませんが……なんだか、この辺りに違和感が」  そう言って、斯人は自分の腹部に手を当てた。詩音はぎょっとして、 「え、だ、大丈夫? 痛い? 気持ち悪い?」 「不快ではありますが……痛みとは違うような。何でしょう……」 「どうしよう、急に連れ出したから体調が……!?」  慌てふためく詩音の耳に、小さな声が届いた。鳴いた虫は、斯人の腹の中にいるようだ。 「……もしかして、お腹すいてる?」 「ああ、そうか。これは空腹の感覚だったんですね」 「心配させないでよ、もう!」  飲まず食わずの加護があった斯人は、空腹さえも忘れてしまっていた。脱力した詩音に、斯人は眉根を寄せて言う。 「意識したら、耐えられなくなってきました。あなたのせいですよ、責任とってください」 「わ、わかったってば。書寂館って、台所とかある? 十歳までは斯人くんもご飯食べてたんだよね?」 「ありますよ。冷蔵庫と、電子レンジと、コンロもそろってます。ただ、ホコリをかぶっているでしょうね」 「料理の前に掃除が必要だね……」  詩音は苦笑しながら、スーパーのほうへ足を向けた。
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