オタクな神

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店員が不愛想に挨拶をする。僕は棚に並んだ中古のゲームソフトを見た。少し古い型のテレビゲーム様のものが沢山置いてある。どうしよう。僕は主にパソコンでゲームをやっている。テレビゲームは小学生の頃に友達の家で遊んだ記憶があるだけで、家には本体がない。帰ろうかなとも思ったが、折角来たんだ。僕はゆっくりと置かれているソフトたちを確認していった。なるほど面白そうなゲームもあることはある。本体を買ったらお金は幾らくらいになるんだろう。バイト代で足りるだろうか。あれこれと考えていると、先にいた眼鏡の女の子がこちらを向く。近くで見ると目が大きくて鼻筋の整った可愛い子だ。同じ年くらいだろうか。一人で秋葉原に来たのだろうか。僕の思考はクエスチョンマークを作りながら迷走する。 「あの、知り合いでしたっけ?」  ヤバい、あからさまにジロジロ見てしまったのだろうか。女の子が首を傾げながら聞いてきた。 「いえ、たぶん知らないです」  僕は赤くなって答えた。 「あっ、それ」  女の子が僕が手に取って持っているゲームソフトを指さす。 「これが何か?」 「わたしが探してたものなんです」  僕は自分の右手を見た。『神の手・ゴッドハンド』と赤いラベルが貼ってある黒くて四角いプラスチックケースを握っていた。
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