オタクな神

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 はじめて秋葉原に行こうと思った。都内に出るのは中学生の頃から憧れていたのだが、埼玉県の北部の田舎に住んでいる僕にはそこは遠い存在だった。僕は秋葉原に行きたい一心で高校に入ってからアルバイトを始める。収入源に選んだのは駅前のハンバーガー屋さんだ。そして兄や友達から遊びの誘いにも断りお金を貯める事に専念した。お金は無駄遣いをしなかったので直ぐに貯めることが出来た。 「ねえ、お母さん、一人で秋葉に行ってくる」  僕はキッチンで野菜を切っている母から承諾を得ようと思った。 「あら、何しに行くの?」  母はこちらを見ずに答えた。 「バーチャルリアリティーのね、ゲームのヘッドセットを買いに行くんだ」 「そう、一人でなんて危ないんじゃないの?」 「大丈夫だよ。みんな行ってるよ」  僕はそう言うと、椅子に腰かけ、オレンジジュースを飲んだ。それは100パーセント果汁のもので酸っぱかった。大人の味に僕が片目を瞑って渋い顔をしていると、母がクスリと笑った。 「ホラ、まだ子供なんだから気を付けなさい。秋葉もね」 「あっ」 僕はちょっと拗ねてみせる。母がまた頬を緩ませた。 「悠斗が貯めたお金なんだから好きに使えばいいのよ」  よしっ、僕は拳を握った。
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