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「ラジオでもつけるか」
そう言い出した光一に、もしや、この人も落ち着かないのだろうか、と思ったとき、部屋のあちこちにあるスピーカーから、小さな音で素敵なクラシックが流れ始めた。
……いい雰囲気だが眠くなるな、クラシック、と思ったとき、光一が、
「花鈴」
と呼びかけながら、肩に手を置こうとした。
手刀で防ぐ。
「かり……」
新たに繰り出された光一の手を、振り返り、また、パシ、と防ぐと、
「……お前はカンフーでもやってたのか」
と防がれたままの体勢で光一が言ってくる。
「やってました」
「は?」
「子どもの頃、カンフー映画にハマッて、兄と二ヶ月ほど」
「二ヶ月しか学んでない技を今、繰り出してくるな」
捕らえて縛るぞ、と光一は悪代官のようなことを言ってくる。
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