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「ところで、お前の不安ってどんなのだ?」
「えっ?
仕事でミスしないかなとか」
「不安に思うより、ミスしないよう準備して立ち回れ」
……ですよね。
「あと、今は私に懐いてくれているハルちゃんが、おば離れして、うるせー、クソババアとか言い出したらどうしようとか」
「……死ぬほどしょうもないな」
「専務に寝相が悪いことがバレたらどうしようとか」
「それはもうバレてるぞ」
ええっ?
「じゃ、じゃあ、勝手に此処を出て、夢遊病的に歩いていったらどうしようとかっ」
「この屋敷から歩いて出るのは相当かかるだろうな」
その前に田畑が止めるだろ、と言われる。
「外まで出たら、高倉さんとか現れそうですしね……」
だが、光一はそう呟く花鈴の手を引き、膝に乗せると、
「……お前に、どんな不安があっても、ずっとこうして抱いててやるから」
と言ってきた。
ちょっと涙が出そうになったが。
そのタイミングで言われると、高倉さんが現れることが不安、みたいに聞こえなくもないのですが……と思っていた。
だが、そう思いながらも、口には出さずに、
「私も」
と花鈴は言う。
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