1671人が本棚に入れています
本棚に追加
……つ、ついて来てしまいました。
というか、なんだかんだ言いながら、家まで送ってもらえるかな、と期待していたのに、湾岸沿いのなんか高そうなホテルに連れてこられました。
しかも、わあ、対岸の工場の灯りが海に映って綺麗だな~とか喜んだのも束の間、あっという間に分厚いカーテンを閉められてしまいましたよ……?
花鈴は電動で閉まりゆく遮光カーテンを呆然と見つめていた。
刑務所の門が閉まっていくときみたいだ、と思う。
いや、刑務所に入ったことはないのだが……。
ドアにオートロックで鍵がかかった瞬間より、閉じ込められた感じがした。
視覚的に外とのつながりが遮断されてしまったからだろう。
ウエディングドレスを買ったという安芸と別れて三十分。
「ねえ、お客さん、今日は誰か追ってかないの~?」
とスリルを求める運転手にまだ安芸が困らされている頃に、もうこんなことになっていた。
あの路上に戻りたい。
なんかやり直したい、いろいろと。
何故、こんなことに?
いや、専務のことは嫌いではないのですが。
いろいろと心の準備とか、準備とか、準備とか……と動転しながら、もう外が見えなくなってしまったカーテンをまだ見つめている花鈴に、後ろから光一が呼びかけてきた。
最初のコメントを投稿しよう!