03 綾斗とプログラムの神様3

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「すっごい玉の輿じゃん!? なんだよそれ、絶対会いにいくべきだって!」 「会いにいくって……」  憧れはある。遠目に姿を見られるものなら見てみたいという気持ちもある。けれど、自分が話しかけたいなどとは思わない。  結局、会いにいけと何度も言われつつ、無理だし行かないと答えながら帰路についた。 「おはようございます」  綾斗はいつも通り挨拶をしながら、オフィスビルの一角にある会社に足を踏み入れた。  ラボシステム株式会社。従業員四十人ぐらいの中小企業で、綾斗が派遣されている会社だ。社員の人たちは略して「ラボ」と呼んでいる。  綾斗はシステム部にある自分の席に鞄とダウンジャケットを置き、パソコンを起動して、給湯室に向かった。  もうすっかり慣れた手つきで、コーヒーメーカーにコーヒーと水をセットする。当番というわけではないのだが、コーヒーを飲む人の中では綾斗が一番早く出社するため、朝一のコーヒーは自然と綾斗が毎日セットするようになっていた。 「やあ、白藤君。今日もコーヒーがいい匂いだねぇ。おはようー」  マイペースな、のんびりとした声が後ろからかけられる。そのノリに合わせて緩く対応する社員も多いことは知っているが、自分はまだ派遣だし、何よりオメガだ。綾斗は立場をわきまえて笑顔を作り、はきはきと挨拶しながら振り返った。
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