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システムのソースコードが脳裏に浮かぶ。S.Kujoの脳内イメージはそれだった。
あの神々しいソースコードの人に、自分が会う? 明日?
それからは動転して、何を話したかあまり覚えていない。「それじゃ、よろしくね」とマイカップにコーヒーを注いで去っていく部長を、ぼんやりと見送る。
S.Kujoの「S」って、「しげはる」だったんだ。
考えなければならないことは山ほどあるはずなのに、今はそれしか思い浮かばなかった。
翌日の午前中、綾斗は日野原と大学に来ていた。
大学の校舎に入り、丸テーブルと椅子が並んだ多目的スペースに入る。学生たちが自習などに使う場所のようだが、今は誰もいない。
綾斗は椅子に座り、まるで注射の順番を待つ子供のような心境で、避けがたいその時を待っていた。
S.Kujoと会える。
それは凄まじいストレスを綾斗に与えていた。
綾斗だってS.Kujoに会いたいし、話したい。少しでもいい印象を持ってほしいし、できるものなら今までの感謝を伝えたい。
昨日、仕事帰りにスーツを買いにいった。吊るしのスーツだが、今までで一番高いスーツを、セール対象じゃないのに買った。ワイシャツも買った。ネクタイも買った。靴下も買った。意味がわからないが下着も買った。勢いで菓子折まで買って帰った。そしてふと気づいた。
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