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01 綾斗とプログラムの神様1
『離して!』
悲痛な声を響かせながら、女性が男の手を振り払う。拒絶された男は、諦めきれないとでもいうように必死な声を出した。
『どうしてなんだ。俺たちは運命のつがいなのに』
『そんなの関係ない。私はもう、ソウタさんのものなの!』
決然と言い放つものの、女性はつらそうに震え、涙をにじませる。男はその涙を見るなり強引に女性を腕の中にかき抱き、その唇を奪った。
そんなシーンを大きな画面いっぱいに映す家電量販店のテレビの前で、白藤綾斗はさっきから足を止めていた。
録画してあるので、今こんなところで途中から見る必要はないのだが、あまりにいい場面で、つい見入ってしまっていた。
主人公の女性はオメガで、男はアルファ。
ベータの夫がある身なのに、運命のつがいである男に出会ってしまい、優しいベータと情熱的なアルファの間で主人公が揺れ動くメロドラマだ。
内容はベタだが、綾斗はこういう恋愛ドラマが大好きで、いつも主人公にどっぷり感情移入して見ていた。
人類には、他の動物とは違い、男女の性別の他に、バース性という第二の性別がある。
アルファ、ベータ、オメガ。この三種類だ。
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