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つまり、アルファがこの年で童貞というのは、どこかおかしい。
――のだが、綾斗はぐわっと燃え上がった。
中学の時に噛まれて捨てられて、マッチングで振られまくり、自分はオメガとして不遇だと思っていた。
否。
否である。
自分はこのために、この瞬間のために、オメガとして生まれてきたのだ。
もう歓喜のままに、綾斗は動いていた。
体が急速にマッチングでの勘を取り戻していく。いや、当時よりももっとなめらかに、淫らに、腰をグラインドさせる。その激しい動きに合わせてネクタイが揺れ、綾斗もノットを引き下げた。
「あ……ぁ……ッ」
九条の手が、何かつかもうと床をさまよい、手に当たったサーバーラックのキャスターをつかむ。
そんなものでも、藁にもすがるようにつかもうとする九条の物慣れなさに、もう胸がずきゅんときた。
「かわいい……」
「……ぇ……?」
アルファに対して、普通は使われることのない形容詞だが、それが一番しっくりくる。自分だって余裕なんかないけど、九条も必死で、それがわかって、胸が詰まっていっぱいで、もっと九条を締めつける。
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