02 綾斗とプログラムの神様2

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 三年前、このIT業界に入ったのは、プログラムをしたかったからではなく、それしか選択肢がなかったからだ。  オメガはまともな仕事に就くことができない。オメガの仕事といえば、風俗しかなかったぐらいだ。  そんな状況に変化が見え始めたのは数年前、画期的な抑制剤が世に出てからだ。  その抑制剤を飲めば、発情期の発情を抑え込め、周囲にフェロモンをまき散らすこともない。この薬が効くオメガなら、発情期中も普通に仕事ができる。綾斗も、その薬の恩恵にあずかれた一人だ。  しかし、画期的な薬が出ても、世間の認識は急には変わらない。オメガは採用お断り、という業種の方がまだまだ多い。  そんな中、抑制剤の効くオメガを真っ先に受け入れたのが、人手不足のIT業界だった。人手不足の業界は他にもあるが、その中でもIT業界は接客業でなく、力仕事でもないことから、オメガを受け入れやすかったのだ。だから綾斗もこの業界に入った。  最初は離職率の高い、環境の悪い会社にばかり派遣された。しかもオメガということで職場の人から仲間外れにされ、ろくに教育もしてもらえなかった。取引先の二次請けから丸投げされた仕事をひたすら見よう見真似でコーディングするだけで、やりがいも見いだせず、生活のために消耗する日々が二年続いた。  それが変わったのが、現在派遣されている会社であるラボシステムで、そのソースコードを見た時だ。  そのプログラムは、美しかった。
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