207人が本棚に入れています
本棚に追加
03 綾斗とプログラムの神様3
「え、なんで? 何がよかったの? ……って、綾斗ががんばったからか」
それもあるけど。
綾斗は、はっきりと、頭の中にその文字を思い浮かべた。
『Created by S.Kujo』
ソースコードに書かれたその作成者の表記が、どんなに尊く、頼もしく見えたことか。
綾斗に目指す道を示してくれたS.Kujoは、綾斗にとって、プログラムの神様だった。
綾斗の派遣契約の期限は三月末までだった。今までの自分のままだったなら、今回の派遣先はたまたまいい会社だった、というだけで終わっただろう。それが正社員に、という話が出るまでに自分が成長できたのは、間違いなく――。
「S.Kujoのおかげだよ」
その名前を口に出すと、誇らしい気持ちになる。自然と口元がほころび、笑顔になる。
S.Kujoのことは、これまでも時々加宮に話していた。加宮は綾斗の緩んだ顔を見ながら、ふと聞いてきた。
「ねぇ、そのS.Kujoって、アルファ?」
聞かれて、面食らう。思わぬ質問だった。
「……ああ、うん。そうだけど」
すると加宮は途端に、にやっと笑った。
「なぁんだ、綾斗にもいるんじゃん。気になる人」
最初のコメントを投稿しよう!