03 綾斗とプログラムの神様3

1/5
前へ
/50ページ
次へ

03 綾斗とプログラムの神様3

「え、なんで? 何がよかったの? ……って、綾斗ががんばったからか」  それもあるけど。  綾斗は、はっきりと、頭の中にその文字を思い浮かべた。 『Created by S.Kujo(エス・クジヨー)』  ソースコードに書かれたその作成者の表記が、どんなに尊く、頼もしく見えたことか。  綾斗に目指す道を示してくれたS.Kujoは、綾斗にとって、プログラムの神様だった。  綾斗の派遣契約の期限は三月末までだった。今までの自分のままだったなら、今回の派遣先はたまたまいい会社だった、というだけで終わっただろう。それが正社員に、という話が出るまでに自分が成長できたのは、間違いなく――。 「S.Kujoのおかげだよ」  その名前を口に出すと、誇らしい気持ちになる。自然と口元がほころび、笑顔になる。  S.Kujoのことは、これまでも時々加宮に話していた。加宮は綾斗の緩んだ顔を見ながら、ふと聞いてきた。 「ねぇ、そのS.Kujoって、アルファ?」  聞かれて、面食らう。思わぬ質問だった。 「……ああ、うん。そうだけど」  すると加宮は途端に、にやっと笑った。 「なぁんだ、綾斗にもいるんじゃん。気になる人」
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

207人が本棚に入れています
本棚に追加