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「……指輪は、シルバー台で、七号サイズ。アイオライトは、こちらのルースで承りました」
これ、っていうデザインが決まった後は、早かった。
花冠のデザインのメインストーンに使える大きさのアイオライトは、たくさんは、無かった。その中から選ぶ、ってなって、山本さんは私とゆきに、またルーペを貸してくれた。
それで覗いて、二つに絞って。そのあとは、山本さんがピンセットで箱から出して、私の指に乗せてみてくれて。
「こっちかな……」
「こっちだね!」
二人の意見が、一致した。
すみれ色が凛と澄んでいて、特徴的な複色がよく分かる、小さくともきれいな石だ。
「宜しかったら、メレもお選びになりますか?」
アイオライトを元通り箱に収めて、分からなくならない様に名前を書いたマスキングテープを貼りながら、山本さんが安斎さんの方を見た。
「失礼致します」
安斎さんが、黒いトレイを目の前に置く。
「うわ……」
暗い夜空に星が光っているみたいな、小さな小さな粒のダイヤが、トレイにざらっと乗っている。
子供の頃、ゆきと行った親子キャンプで真夜中に見た星空が、ちょうどこんな風だった。
「どうしてアイオライトのトレイは白いのに、ダイヤのトレイは黒いんですか?」
私がゆきに起こされて、起こして見た星空を思い出してるなんて、きっと思ってないゆきは、そんな質問をしていた──山本さんじゃなく、安斎さんに。
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