花冠とすみれの指輪

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「うぇっ?!」 「え……!!」  分かれる前は、どれも同じに見えてた、メレダイヤ。  でも、いくつかに分けられた山は、ライトで照らすとそれぞれ全然違って見えた。  控え目にちらちらするもの。  光の玉の集まりみたいに輝くもの。  真っ白に光るもの。  七色に見えるもの。  すごい、安斎さん……私、ずーっと見てても絶対分けられない自信が有るよ……!!  「採算度外視のマニアックなスタッフ」って、一番は、安斎さん自身の事じゃないの?!  ……あ。  そう言えば山本さんも、さっきからマニアックさでは良い勝負だったね……。 「こちらは、ハイジュエリーやエンゲージリング、マリッジリング等に使われるクオリティの物です。小さいけれど、ひとつひとつが最上級に近い物で、それぞれ個性を持っています。メレでこれだけ綺麗なものは、珍しいかと思います」  安斎さんはライトを消して、私達の前に置いた。 「北う…………ティアラアミュレットシリーズの七号のリングでメインストーンが先程のアイオライトのサイズですと、こちらにお持ちしたメレダイヤなら両脇に三石ずつの六石が入ります。どちらの石が宜しいですか?」 「えっ?!」  多分安斎さんが私の名前を呼び掛けて、ゆきがちょっとぴくっとしたけど、続いた言葉でゆきの「ぴくっ」は、吹っ飛んじゃった。 「この中から選んで使わせて貰って、良いんですかっ?!」 「もちろんで御座います」  ゆきの質問に、今度は山本さんが頷いた。 「そのために、お見せしたのですから……追加料金等も不要で御座います」  山本さんは立ち上がりながらちらっと安斎さんを見て、並んで立つと二人揃って深々とお辞儀した。 「先程の安斎の失礼のお詫びとでもお考え頂ければと思います」
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