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「……じゃあ、お言葉に甘えます……まな?」
ゆきは、安斎さんからピンセットとルーペを受け取ってそれをくるっとひっくり返すと、私に持ち手を差し出した。
「ううん。」
私は、ゆきに選んで欲しい。
そう思って頭を振ると、ゆきは七色に光ってる山を指差した。
「この中から、選んで良い?」
「ん。」
こっくり、頷いた。
控え目に七色に光るダイヤは、華やかに輝く物よりずっと、白詰草の花を思い出させる。
小さなダイヤをルーペで見ながら、ゆきはひとつひとつ丁寧に石を選んでくれた。
白詰草を一本一本、選んで束ねてくれるみたいに。
「よし、六個。これでいい?まなちん。」
さらりと呼ばれて、ほんの少し、返事が遅れた。
トレイの上で選び出された六つの小さな石達は、「内緒だよ」って言ってるみたいに、にこにこ笑ってくれている。
「……うん。ありがとう、ゆきにい。」
「では、こちらで手配させて頂きますね」
私達にしか分からない、暗号みたいな、ささやかなやり取り。
それを聞いた山本さんは六つの石をケースに仕舞い、ゆきからルーペとピンセットを返して貰った安斎さんに、ダイヤの乗ったトレイごと渡した。
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