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そよそよと気持ちの良い風が吹いてくる、五月のある日。
「あー……可愛いなあ……可愛い……」
「ゆき。それ、何度目?」
「梨香ねぇ、ごめん……私も、かわいいしか、言葉が出ない……」
壊れた機械みたいに、リピートを繰り返すゆき。
ゆきをいじりながらも、顔がへにゃへにゃな梨香ねぇ、そして私。
分かる。分かりすぎる。
ゆきの気持ちも、梨香ねぇの気持ちも、分かりすぎるよ……!!
私達はちぃちゃんちに、生まれたての赤ちゃんを見に来ているのだ。
あんまり人が多いとびっくりするだろうってことで、春香達が学校の平日を狙った。私と梨香ねぇは平日の空き時間を使ってるけど、ゆきなんか一緒に来たくて休みまで取った。
いとこ水入らずでどうぞって、自営業なのに半分自主的に育休中のだんなさんは、仕事に行っているらしい。でも多分何か有ったら飛んで帰ってくるだろうって、ちぃちゃんは笑ってた。
「こんなに大人が囲んでるのに泣かなくて、いい子でちゅねー」
「ゆき、口調が不気味。」
「あはは、大丈夫だよー?四人目だからかなぁ、うるさくしても、全然平気」
「大物だねー、りょーうくーん♡」
「梨香姉。アイドルのライブじゃ無いんだから、その呼び掛けやめて……りょーくんすっかりおばちゃんやお姉ちゃんのおもちゃでちゅねー」
「……それ、誰のこと?」
梨香ねぇがゆきをじとっとした目で見る。
梨香ねぇとゆきは、年の差が春香とりょうくんに近いんだよね……なるほどー。将来、こうなる……のかな?
「男の子って、女の子と違う?」
すっかりベテランママさんのちぃちゃんに聞いてみる。将来の参考に……なーんて。
「んー……性格は、その子その子の個性の方が、差が大きいかなー。絶対的に違うのは、オムツ替え。」
「ああ……」
一同、納得。
そりゃあ、そうだよねー。
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