ステージ13 『誘掖』

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状況を冷静に捉えろと、マルトは厳しく問う。自分たちはここへ何をしに来たのか、しっかり思い出せと、ライラを落ち着かせる。こんなところで分散したら、状況は益々不利になり、目的も果たせないだろうと強く声を出す。 それからマルトは、森に逃げ込んでしまったゼノを探すように、暗闇に視線を向けるがその姿はどこにも見えない。 「どこまで行ってしまったんだ」 完全に見失ったと、マルトは森に入るべきか否かを悩む。 「くっ、……ははは……」 「ライラ?」 森の奥にゼノを探すマルトの背後から、突然ライラの笑い声がした。大剣を消し去ったライラは、ゆっくりと一本の木に歩き出す。 木にたどり着くと、ライラはその木を見上げた。 「出てこい」 一言告げると、カサっと木の葉が揺れるのが分かった。 「……もう怒ってない?」 弱々しいゼノの声。てっきり森の奥へ逃げ込んだと思ったゼノは、すぐそばの木の上にいた。マルトでさえ気配を探れなかったゼノを、ライラは瞬時に居場所を見抜く。そのことにマルトは大きく目を開いた。こんなに近くに居たのなら、わかったはずなのに、マルトには分からなかった。 「ああ、変な気負いが完全にすっ飛んだ」 ライラは大きく伸びをすると、さっきまで身体が硬くなるほどの緊張感を背負っていたが、ゼノに付き合ったら、それも全部消えてスッキリしたと笑って見せた。 怒っていないと分かると、ゼノが舞うように地に降りる。 「僕の事、食べない?」 「お前なんか食べたら、確実に腹壊す」 「ぶぅ~、僕だってきっと美味しいもん」 「めちゃめちゃマズイ」 それだけは断言できると、美味しくないと顔に見せたライラに、ゼノがむくれた。 そう、これが普段通りのやり取り。 それを見ていたマルトは、ライラが口にしたように、言いようのない緊張がなくなっていることに気がつく。敵地に来たことと、自分たちの行動が相手に知れていること、見えない敵に感じる恐怖、罠に自ら嵌る……、不安要素が増え、ライラもマルトもずっと気負いしていたが、ゼノがそれを全部崩した。 緊張で硬くなっていた身体が、思いのほか軽くなっていた。
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