151人が本棚に入れています
本棚に追加
/575ページ
トスッ
それは音になるには小さすぎたが、受けた者はわずかな痛みを確かに感じた。
「――ッ」
足に虫に刺されたような痛みを感じ、ライラは声にならない声を出した。
痛みの元は小さな針。
そしてその針は今倒したばかりの相手の一人から受けたものだった。
「油断……したな……」
まだ意識(命)のあった者がライラに向かって不適な笑みでそう声をかけた。
ダメージ的にもうすぐ自分の世界に戻されるだろう者の最後の悪あがき。
「その針には毒が塗ってある。……お前の命もあと1日だ」
「なっ!」
小さな針に仕組まれた罠にライラが目を見開く。当然あとの二人も息を詰まらせる。
「てめぇ!」
足に刺さるその針を地に捨て、ライラが倒れる者に掴みかかった。
「……くぅ……裏切り者には死を……」
「――!!」
ライラが掴んでいた者が光とともにその姿を消した。
間界での命が尽き、自分の世界に転送されたのだ。
「ライラ!」
「ライたん」
ここでようやく2人が動く。
「上等だ」
まるで今消えた者にでも挑戦するかのように、ライラは口角を上げてニヤリと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!