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今日も私のピアノライブが始まる。
ライブと言っても、私がそう思っているだけで、要するに、このバーにお酒を嗜みに来ているお客様にとってのBGM係だ。
でもBGMなら今時、USENなりCDなりで音楽を流すだけでいいのに、マスターは私にここで毎日ピアノを弾かせてくれている。
それに常連のお客様の中には、少数だが私のライブを目的に観に来てくださってる方もいて、少しずつだが、インディーズで出したCDも買ってくださる。
これでいい
と思った。
届くべく人に私の歌が届いているなら、それでいい。
日々感謝あるのみだ。
ステージは小さくたって、私はまだ、歌い続けているのだから。
今日は私がソロになってから自分で作った曲と、スタンダードナンバーの、マット・デニスが自分で作って自らピアノで弾き語りをしていた「ANGEL EYES」や、オードリー・ヘップバーンが映画「ティファニーで朝食を」の中で歌った「MOON RIVER」などを弾き語りしよう。
お客様から、先週歌った、大昔にリー・ワイリーが歌っていた「MANHATTAN」のリクエストがあり、それも喜んで歌わせていただく。
全てリアルタイムでは知らないオールドソングだが、良い曲は、時代を超えていつまでも生き続けるのだ。
私たちの唯一のヒット曲はただの流行歌にすぎない。
今ではもう、みんな忘れている。
でもそんな埋もれた曲を、時代とは関係なく、私一人のピアノの弾き語りで歌ってきた。
未完成な、片翼だけで飛びながら。
ただ今日は歌いたくない。
今日は片翼だけで飛ぶ力がなかった。
そんな日もあるのだ。
演奏が終わる。
拡がるまばらな拍手。
たまにはカラオケを歌いたいお客様がいて、店にカラオケがないので、私がピアノで伴奏することもあるけど、素人のお客様相手とは言え、デュエットすることが私には懐かしく、嬉しい。
たまには私たちの唯一のヒット曲のデュエットをリクエストされるお客様もいらっしゃって、そんな時は特に嬉しい。
私たちの歌を覚えていてくださっただけでも嬉しい。
今日はカラオケ代わりの伴奏リクエストはなく、私の、BGM代わりのライブになっていた。
小さなステージ
小さなライブ
私はここで生きている
それだけでいい
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