その2人、美しく居て、厄介

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その2人、美しく居て、厄介

とある山の奥に、如月(きさらぎ)観音寺という場所がある。 大きな場所で、紫陽花の季節には色とりどりの紫陽花が咲き乱れ祭りまで開かれるほどの場所で、町では有名であった。 だが、それが山奥で車でしか行きようがない山頂部分にあるというのがどうしても難点であった。 道路や歩道は整備され、歩こうと思えば歩けるが、山登りの経験のある者でないと到底難しいような距離でお年寄りや小さな子供には難しい道であった。そのかわり、サイクリングやバイカーなど乗り物を好む人にとっては、広い車道のあるこの山登りはとても好まれていて人は常に行き交っていた。 ただ、寺となればやはりお年寄りは行きたいもの。大きな駐車場があるが、車を運転できない人には来にくい。 なので、車を運転できないお年寄りたちのために山の麓のバス亭から大型のバスが30分ごとに往復している。 山の為だけのバスなのだが、人がたくさん行き交うことからバス停には休憩所とコンビニがあり、如月観音寺に行くにはさほど難しいことではなくなった。 さらに、山頂の如月観音寺は美味しいカフェもあり、サイクリングなどが出来ることもあって若い人たちもよく来ていた。 様々な設備を整え、環境も整っている如月観音寺は他の地域からも人が訪れる程の老若男女問わずの人気ぶりだった。 しかし この山には、如月観音寺とは別にとある場所がある。 山の麓よりちょっと登ったところにある場所に階段があり、その階段を登ると水色の鳥居がある。 駐車場がないので車でも行けず、駐輪場がないのでバイクや自転車を止める場所はなく、さらに階段であるので徒歩でしか行けないその場所には、真っ赤な屋根の美しい神社がある。 人が寄り付きずらい場所なのにとても綺麗にされている神社には神職の一家が住んでいるのは町でもよく知られている。 バスは一切そこには止まらず通り過ぎてしまう、その寂しい神社の名は。 『青神社』という。
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