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『デビューモノは初めて購入しましたが、モデルさんの初々しさがとても良かったです』
『安定の獅琉と潤歩。亜利馬くんも頑張ってる感じが伝わってきて、買って損はなかったです』
『拘束が甘い!もっとハードな鬼畜プレイを希望します(笑)』
午後になってスマホを見たら、十件くらいのレビューが書き込まれていて心臓が飛び上がった。怖くて仕方なかったけど、今のところマイナスな書き込みはなさそうだ。
「サイトで購入したり、購入した作品にレビューを書くと会員ポイントが溜まっていって、割引とかになるんだよ」
食事を終えた獅琉が俺の後ろからスマホを覗き、教えてくれた。
「だから、こんなに書き込んでもらえるんだ……」
「インヘルのお客さんは割とほのぼのした人が多いっていうか、良い人達ばっかだよ。たまにおかしなこと書かれるけどね。細かーいプレイの要望とか、誰々とは絡むな、とか」
AVに限らず誰もが絶賛する作品を作るなんて不可能だから、万が一嫌なことを書かれても気にしない方がいいよ、と獅琉が言った。ただし、為になる厳しい言葉はちゃんと受け止めるように、とも。
『これから亜利馬くんの成長を陰ながら応援します。頑張ってください』
「ありがたい……」
『オナニーとか感じてる顔はエロかったけど、子供っぽすぎるかな。潤歩と歩いてると年の離れた兄弟みたい』
「……すいません」
いつまでもコメントを眺めていたかったけど、そろそろ打ち合わせの時間だ。名残惜しいけどスマホをポケットに入れて、俺は「行ってきます」と四人に告げ会議室を出た。
「失礼します」
一つ上の階にある面談室みたいな部屋に入ると、山野さんと二階堂さん、それからディレクターの今井さんがいた。書類の束を捲りながら既にあれこれと喋っている。
長テーブルが二つ向かい合うようにくっついていて、俺もまた三人と向かい合う形で席につく。
俺が椅子に座るなり、二階堂さんが顎鬚を触りながら言った。
「早速だが亜利馬、次の作品では多少の凌辱プレイを取り込みたいと思っている」
「凌辱……って、前に竜介さんがやってたような……?」
「あれよりも少しハードなものだ」
「えっ!」
「だが安心しろ、縛ったり痛い思いをするようなものじゃない。お前に初々しさが残っているうちに、『本気で恥ずかしがっている顔』を撮っておきたいんだ」
「………」
いつだって本気で恥ずかしいのに、これ以上どんな「凌辱」が待っているというのだろう。
山野さんが俺の方へと書類を滑らせながら説明する。
「今のところ考えているのは……、道具を使っての亀頭攻め、開脚椅子を使っての全身マッサージ、回転式オナホールでの連続イキ、潮噴き、放尿、目隠し、言葉攻め、……」
「ちょ、ちょ、待ってください……!」
咄嗟に鼻を押さえて片手を振り、俺は山野さんの説明を遮った。テーブル上の書類にも同じことが書いてあり、とても直視できない。
「こ、これってハードル高すぎませんか。とても俺には……」
「そんなことない。どれもよくあるプレイだ」
「ええ……」
今井さんがペンをカチカチさせながら言った。
「この中で『今はどうしても無理』ってのはあるかい?」
「……全部、って言いたいですけど……うーん、潮噴き……放尿……この辺りはちょっと。あと、連続イキっていうのもできるか自信がありません」
「うんうん」
頷き、今井さんが書類にチェックを入れていく。打消し線を引いている様子はない。
「開脚椅子で目隠しされながらの全身舐め&マッサージなんてどうだろ」
今井さんが二階堂さんに言うと、
「その状態で始めに亀頭マッサージャー、フィニッシュを回転オナホールにするか」
「でも、射精の瞬間がオナホで隠れて映せないのは勿体なくないかな。回転使いたいならちょっとチャレンジ企画も入れる? 開始から何分まで射精我慢できるか、とかの逆タイムアタック」
「それはブレイズの特典映像にしてもいいな。獅琉や潤歩なんかは喜んでやりたがりそうだ」
今井さんと二階堂さんが勝手に話を進めていく。聞くところによるとこの二人は昔から一緒に仕事をしているらしい。「現場監督」と「ディレクター」という呼び方はあるものの仕事内容は殆ど同じで、趣向も似ているらしく誰よりも息ぴったりなのだ。
「………」
「開脚椅子からの流れは決定だな。後は亜利馬がどの程度の力を発揮してくれるか」
書類の説明を読むと、その開脚椅子とやらは「人」みたいな形のソファで、座れば自然と脚が開いてしまうものらしい。膝の辺りをバンドで固定され、ずり落ちることはない。
「今回は相手役の一人に竜介を使うか。彼なら道具の扱いにも慣れてるし、亜利馬をリードできそうだ」
「……た、大雅に怒られる……」
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