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1.いざ拘置所
「二年前に、そんなことがあったんですか……」
徳憲忠志はどう評すれば良いのか、言及に窮してしまった。
それほどまでに、今しがた耳に入れた忠岡悲呂の過去回想は痛ましく、重苦しく、筆舌に尽くしがたい後味の悪さを引いていたから。
過去の汚点を洗いざらい打ち明けた心理係の豪胆ぶりも凄まじいが、直属の上司である穂村勘十郎管理官も当時の様子を思い返しては、涼しげな流し目と彫りの深い鼻梁を歪めていた。彼の胸中も、真綿で首を絞められるような気分だったに違いない。
(二年前の詐欺事件……そこが全ての始まり、か)
徳憲は改めて、心の中で整理してみる。
かつて新人だった忠岡が遭遇した『最初で最後の事件』。
同期の相棒ともいうべき男性研究員が、まさかの真犯人だったという凄絶な幕引き。
忠岡悲呂が彼とコンビを組んだのは、文字通り最初で最後だったわけだ。
お気楽でぐーたらな忠岡が、よもやの異性に一目惚れ。柄にもなく男女を意識したかと思えば、見事に裏切られた格好だ。はて、このパターンはどこかで聞いたような――。
(俺が『動画炎上』事件で小夜さんを好きになったときと同じだな)
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