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「い、いいんですか忠岡さん?」
「なーによ忠志くん」
「忠岡さんにとって、その男は二度と会いたくない極悪人のはずでは?」
「えー何なに、あたしのこと心配してくれてんの?」
「いや、それは天地が引っくり返ってもあり得ませんけど」
「ちぇー。あたしが昔のオトコを口にしたから、てっきり忠志くんが嫉妬したのかと期待したのになー」
何だその理屈は。徳憲が惣谷とやらにヤキモチを妬く道理がなさ過ぎて、逆に驚く。
ただ、懸念しただけだ。
忠岡が腹黒くなった『原因』を作った悪党――それが惣谷愴助だ。いくら捜査のためとはいえ、私怨や私情を押し殺して面会に徹することが出来るだろうか?
「これも真実をハッキリさせるためよー。そのためならあたしは何だって提案するわ。あのクソヤローと再会するのははらわたが煮えくり返るけど、ここでグダグダ議論してるくらいなら、とっとと聞きに行った方が建設的だわー」
「……本当に良いんですね? 俺はもう止めませんよ」
徳憲はドライに切って捨てた。確かに忠岡の言う通り、ここでうだうだ話していても日が暮れるだけである。
それに――徳憲自身も興味が湧いたのだ。忠岡が惚れたという男性像に。
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