1.いざ拘置所

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(話では聞いたが、実際に会ってみるのも悪くはない……か?)  この干物女も一丁前に色恋沙汰で悩む時期があったという。その相手が犯罪者だったのは皮肉な話だが、そんな数奇さがまた、彼女にはふさわしいのかも知れない。良くも悪くも規格外・常人離れした烈女には。 「その男にも、忠岡さんはしょっちゅう話しかけたり、まとわり付いたりしていたんですか? 俺にやっていたみたいに」  気が付くと、徳憲はうっかり口をついて出た。  何気ない疑問だったが、忠岡も穂村も目を丸くしている。失言だったと自覚したときにはもう遅かった。 「おやおやー? やっぱりあたしの交際が気になっちゃうわけー?」 「あ、いや、別にそうじゃありませんけど……って、寄って来ないで下さい! 何ですかそのニヤニヤ笑いは!」  口の端を吊り上げてにじり寄る忠岡を、徳憲は両手で引き剥がした。実に鬱陶しい。 「忠岡さんは今みたいに、俺を見かけるたびに過度な接触を試みますよね? けど、それは俺が初めてではなく、別の男へも同じように尻尾を振っていたんですよね……? 俺が特別だったわけじゃないんだ。穴埋め出来れば誰でも良かったんだ……」
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