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「おねーちゃんを騙した恒松悠は別の刑務所に服役しちゃったけど、今なお係争中の愴助くんは『東京拘置所』の未決囚として拘留されてるわー」
忠岡は反吐でも出すように、宿敵の居場所を告げた。
本来なら口にするのも憚れる、惣谷愴助という呪われた名前。
叶うならば自らの手で私刑に処したいであろう不倶戴天の敵に、こちらから頭を下げて面会を申し込む心理はいかばかりか――。
(惣谷と接見したあと、俺たちはどうなってしまうんだろう?)
徳憲は不可思議な疑念に揺さぶられる。
整理が付かなかった。こんなことは初めてだ。彼の心を忠岡が迷わせている。
異彩を放つ干物女と、かつての相棒。そこに徳憲が加わったら、どんな化学変化を起こすのか。その結末は、穂村にだって想像が付かないに違いない。
(俺が首を突っ込んだせいで、忠岡さんが無茶な提案に走ったのか? 俺のせい……?)
一度分かたれたはずの忠岡と惣谷は、徳憲によって急速にねじ曲がり、再び交わる運命へと収斂しつつあった。
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