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「オレオレ詐欺やアポ電詐欺など、ひとたび成功すると反社会組織の間で爆発的に布教される傾向が強い。つまり惣谷の結婚詐欺を耳に入れた暴力団や詐欺グループが、拡散に一役買っている可能性が高いのだ」
「――もしくは、何度もゆーけど『シンクロニシティ』ね」
忠岡が背を向けたまま、ぼそりと吐き捨てた。
徳憲は眉につばを付けざるを得ない。以前の『婚活パラサイト』でも聞いた言説だが、やれ普遍的無意識だの思考共有だのとまことしやかに講釈されても、現実味がない。
いくら学術的に論拠があっても、現物を立証できなければ机上の空論でしかない。実生活で誰もが再現可能な事象でない限り、捜査には組み込めないのだ。
「やめて下さいよ忠岡さん、シンクロニシティなんてあるわけないじゃないですか」
「どーしてそー思うのよ、忠志くん?」
「非現実的すぎます。シンクロニシティで偶然、五〇件以上もの結婚詐欺が多発したなんて言われて、納得する人は居ないでしょう。それよりは穂村管理官がおっしゃった通り、詐欺グループを取りまとめる元締めが布教して回っていると考えた方が妥当です」
「ぶー。ひどーい。あたしと同じ『忠』の字を持つ仲なのにー」
「いや、字は関係ないでしょう?」
相変わらず変な所にこだわる女だな、と徳憲は天を仰いだ。
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