1.いざ拘置所

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 いろいろなしがらみのせいで、肩身が狭いらしい。  ご苦労なことである。人の上に立つ管理官だからこそ、一度の失敗がいつまでも尾を引くのだ。誰にでも間違いはあるのに、糾弾され続ける。社会の厳しさを思い知った。 「でしたらなおのこと、穂村管理官は一連の詐欺事件を見逃せませんよね」  徳憲は気分を変えて意気込んだ。  落ち込んでいても仕方がない。穂村も同調する。 「左様。類似した結婚詐欺が断続的に続いている以上、文書鑑定科の威信にかけて全容を暴かなくてはならん。因縁の対決なのだ。我々の沽券に関わる問題だからな……」  文書鑑定科から犯罪者を出してしまった汚名をそそぐために。  惣谷愴助という恥部を払拭し、名誉を挽回するために。 「ねーねー、なら事件の裏側のことを聞きに行ってみよーよ。元凶の男にさ!」 「へ?」  横槍を入れたのは、またもや忠岡だった。  くるりと踵を返し、徳憲と穂村を一瞥している。少しだけ機嫌を直したようだ。それでもまだ正面きって対峙しようとはせず、斜に構えた格好ではあるけれども。  まるで、何かの悪だくみを思い付いたような、意地悪な表情だ。  一言で書くならば――腹黒い。
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