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「な、何を思い付いたんですか、忠岡さん?」嫌な予感がして身を引く徳憲。「元凶ってどこの誰ですか?」
「決まってるでしょーが。元凶って言えば、あたしのおねーちゃんをだまくらかした張本人・惣谷愴助だけよ!」
「そ、惣谷に会いに行くつもりか!?」
穂村が怒鳴った。
血相を変えている。ナイスミドルの涼しげな流し目が一瞬にして血眼へ豹変したので、隣に居た徳憲は身をすくませた。
反面、忠岡は小さな肢体を物怖じすらさせず、平然と穂村を睨んでいる。腹に一物を抱えた烈女は豪胆だ。
「そーよ。愴助くんは現在、刑事告訴されて拘置所に囚われてるわ。二年経ってもまだ判決が出てないなんて、ほーんと日本の裁判って時間ばっかりかかるわよねー」
「それは惣谷愴助が控訴・上告したせいだ。実行犯の恒松悠は大人しく一審判決を受け入れたが、首謀者の惣谷は往生際が悪くてな……」
「でさー、拘置中でも面会は出来るでしょー? 事件のことを改めて聞いてみればいーんじゃない? シンクロニシティなのか、暴力団の教唆なのか……本人に確かめた方が手っ取り早いよー?」
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