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それから三時間が過ぎました。
ちらり、と三人を見やります。三人とも、ゲームを両手に持ったまま、大きないびきをして眠っていました。
だらしのないものです。子どもというのは目先のことばかりに気を取られてばかりいるのです。そんなんじゃ、いつまでたっても神隠しの謎を解くことはできません。
私は、やれやれ、と呟いてから、まずは猿野くんの手を取りました。
そして、耳元でこう囁いたのです。
──立て。
猿野くんは目を閉じたまま、ゆっくりと立ち上がりました。
──私についてきなさい。
猿野くんは私の背後につきました。次は、雉谷くんです。
──立って私についてきなさい。
雉谷くんにも、耳元で囁きました。雉谷くんも、崩れ落ちそうな足取りで私の背後につきました。
やはり、子どもは単純で好きです。単純過ぎて、心を縛るのも簡単で助かります。世の中の人間、これくらい単純な人が増えたらどれだけ幸せになることか。
鳥居の周りがぐにょぐにょと蠢き、向こう側の景色が、黒い絵の具に塗り潰されたように真っ黒に染まります。この世と違う世界への入り口は、理を超えていくために、どうしても次元を壊さなくてはいけないのです。丑三つ時じゃないと次元が緩まないので、中々大変です。
──νπφδπθδδνμλ´θχκπυσ。
入り口から、異様の者たちの呼び声が聞こえます。
彼らは私が連れている人間の姿を確認すると、触手や鉄爪、ゲル状のよくわからないものを必死にこちらに向けました。早くこっちに連れてきて、と言っているようです。
──かはヰかあまわらゐなァァャェ。
あ……かなり位の高い方まで呼び寄せちゃいましたね。ここまで大事にするつもりはなかったんですけども、仕方ありません。
ぺこり、と礼をしてから、残っている犬川さんの下へ歩いていきます。猿野くんと雉谷くんも一緒についてきます。
しゃがみ込んで、犬川さんの耳元で、またさっきのように、私は、そっと──。
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