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「……あなたは、誰なの」
ぱちり、と犬川さんは目を開きました。そして手に持っていたゲーム機の画面を、あろうことか私の顔面に押し付けたのです。
「ああああああああああああああ!!」
太陽光のように眩しい閃光が、私の眼球を通って全身に回っていきます。まるで溶岩を口の中へ流し込まれていくような苦しみです。
光の届かない暗闇に駆け込むと、猿野くんと雉谷くんにかけた暗示がきれて、2人とも地面に崩れ落ちました。
「……桃田さんは、今日は来ない。ゲーム内メールで来たの。お母さんに見つかったから、今日は来れないって。それに、桃田さんは、私、なんて一人称じゃない。まだ名前で自分のことを呼んでる。……あなた、桃田さんじゃないでしょ」
包み隠していた皮が光に晒されて、ぼろぼろと崩れ落ちていくのがわかりました。
このままではいけない。死んでしまう──。
ぼろぼろと崩れ落ちる皮膚になど構うことなく、ヘロヘロの足取りで私は鳥居に駆け込みました。
不満の声が私を迎えてくれましたが、そんな声を気にすることなく、私は元の世界へと移りました。
「二度と私たちの前に姿を見せないで。今度来たら、間違いなく殺すから」
涙がポロポロと皮膚と共に溢れました。とうとうお尻からふさふさの尻尾が露わになってしまい、いやん、と鳴きました。
急いで次元の裂け目を塞ぐと、また世界は二つに分かれたのでした。
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